井上雄彦を語る②『スラムダンク』
みのくまと申します。
①で流川の目的(=「1対1で日本一の高校生になる」)とその過程を急ぎ足だが書いてみた。
では、なぜその流川が、井上雄彦にとっての「理想のスポーツ選手」になるのかを書いてみたい。
まず流川のその後だが、最終的には沢北に互角に戦うことができ、全日本に選ばれるところで最終回を迎える。非常に順調な終わり方だといえるだろう。
では、①で挙げた「桜木花道」と「赤木剛憲」について書いていこう。
桜木花道は、本作品の主人公であり、バスケット未経験だがどんどん上達していくというキャラクターである。一見「理想のスポーツ選手」に見えるし、実際に湘北高校バスケ部安西監督は、「流川とともに」最高の逸材であると言う。
では、なぜ井上の想う「理想のスポーツ選手」ではないのか。
それは、「目的」がないからである。いや、正確にいえば当初持っていた「目的=赤木晴子」が雲散霧消し、「手段=バスケをする」ことが上位になった、ということである。
桜木は、山王工業戦終盤に背中を痛めるが、周囲の制止を振り切り試合に出ようとする。その時彼は言う。
「(晴子のバスケットは好きですか?という問いに)大好きです。今度は嘘じゃないっす。」
「オヤジ(=安西)の栄光時代はいつだよ… 全日本のときか? オレは…オレは今なんだよ!!」
桜木のポテンシャルは流川と同等であり、彼はようやく流川と同じスタートラインには立つことができたといえる。
よって、現時点においては流川のような「目的」 を持つことことも可能になったが、結局そうはならずに物語は最終回を迎えてしまった。もし、続編が描かれるようなことがあったならば、桜木は「理想のスポーツ選手」として描かれることは可能であろうが、現時点ではまだその土俵に立てただけといったところか。