井上雄彦を語る①『スラムダンク』
みのくまと申します。
『スラムダンク』は、ぼくがまだ幼稚園に入園前からマンガ、アニメですでに大ブームを巻き起こしていた言わずと知れた不朽の名作である。
主人公桜木花道がドシロートと言われながら、持ち前の負けん気の強さと陽気(?)な性格で、コミカルながらもスポ根ものとして男女関係なくハマったものだ。
ただしここでは作品解説というよりも、序章で述べた「理想のスポーツ選手」について書いてみたい。
井上が想い描く「理想のスポーツ選手」については、主要登場人物である「桜木花道」「流川楓」「赤木剛憲」の三人が肝となる。
結論から言えば、井上にとっての「理想のスポーツ選手」とは、「流川楓」のことである。実は「桜木」も「赤木」も、「流川」を生かすためのキャラクターにすぎないのだ。
まず、流川楓はストイックなまで「目的」が明確だ。それは「日本一の高校生」になるということである。そのために授業を犠牲して(?)誰よりも練習に打ち込む。
また、自分が負けることが許せなく、公式戦でも闘志剥き出しにしてスーパープレーを連発する。
しかし、一見完璧なプレイヤーに思える流川も壁にぶち当たる。その存在は、「仙道」と「沢北」だ。
しかしまぁ、私見では仙道は壁というより流川の「師匠」に近い。なぜなら物語が進むにつれ、陵南高校での仙道の地位は上がりすぎて、「(実質的な)キャプテン」や「ポイントガード」といった別の道に仙道は向かってしまう。つまり、流川が目指している「日本一の高校生」とは違う方向にシフトしてしまうのだ。
とはいっても、仙道が流川に及ぼした影響は大きい。それはIHが開幕する前に流川と仙道が1on1をした時の仙道のセリフが、のちに本当の「壁」として立ち塞がる沢北との戦いで、大きな意味を持つことになるのだ。
そのセリフとは「1対1もオフェンスの選択肢の一つにすぎねぇ それがわからねぇうちはおめーには負ける気がしねえ」である。
この回想があったあと、流川は沢北との「1対1」の状況で2本のパスをする。そしてその後、ついに「日本一の高校生」沢北をドリブルで突破する(桜木のミスがその後発生するが)。
しかし、このことが仙道と流川の決定的な相違に他ならない。
なぜならば、明らかに流川は「1対1勝つために」パスをした。つまり、流川にとって「パスは1対1に勝つための選択肢にすぎねえ」のだ。
つまり、流川は「1対1」で勝つことによって「日本一の高校生」になりたいのだ。